Overwatchレベルデザインチーム AMA-ネオン・ジャンクションの設計秘話
Reddit「r/Overwatch」にて、最新ハイブリッドマップ「ネオン・ジャンクション」の設計についてOverwatchレベルデザインチームによるAMA(Ask Me Anything)が開催されました。ワールドビルディング・プロデューサーやリードレベルデザイナーなど、開発陣が直接回答した内容を原文のまま紹介します。
参加した開発陣
- Blizz_Ren – ワールドビルディング・プロデューサー
- Blizz_RySmith – リード・レベルデザイナー
- Blizz_Peterconcept – アソシエイト・アートディレクター
- blizz_andrew – シニア・コンセプトアーティスト
- blizz_phil – シニア・アートスーパーバイザー
- blizz_megan – コミュニティマネージャー
AMA with the Overwatch level design team – We'll be here to answer questions about Neon Junction on Wednesday, July 15, at 11am PT!
byu/blizz_cactus inOverwatch
マップの隠されたディテール
GuySoSly:Blizz_Renさんに質問です。マップ上のワールドビルディング(世界観構築)の設定で、まだプレイヤーたちに見落とされていると感じるディテールはありますか?
Blizz_Ren(ワールドビルディング・プロデューサー):
ショッピングモールのリスポーン地点に「Spectral Systems」という電子機器店があるのですが、よく見るとそこは東京における「ヨーカイ」の活動拠点になっています。店の外にはキリコのバイクが停まっていて、壁には狐をモチーフにしたグラフィティが描かれています。
でも、私の一番のお気に入りは、ノブトの作業場にある設計図ですね。ミズキの回復用「傘」や、ハンゾーのミシック・スキン「東京リベンジャー」の武器の設計図があるんです。ミシック、ナラティブ、ワールドビルディングの各チームで話し合った際、もしノブトがトシロウと協力する機会があれば、ハンゾーの弓をあんな風にアップグレードするだろうと想像して作りました。ハンゾー本人の好みにしては、ちょっと派手すぎるかもしれませんけどね!
blizz_phil(シニア・アートスーパーバイザー):
歌舞伎座は橋元組によって運営されていて、隠された武器ラックや木箱など、彼らの存在を示す楽しいディテールがいくつかあります。ミッドシーズンには、橋元組のロビーでシオンの仮面を見つけることもできますよ。
デザイン哲学の変化とヒーローの移動距離
NeighborhoodSpood:この5年ほどのマップ制作において、デザイン哲学に変化があった例はありますか?また、マップを設計する際、特定のヒーローがジャンプや溝をどう飛び越えるかといった想定はしていますか?(例:ウィンストンならこのジャンプは越えられるべきだが、ジャンクラットは無理、など)。キングス・ロウの第1ポイント直後のチョークポイント上部にある隙間など、アビリティで移動できる距離が似通っているヒーローが数人いることに気づいたので気になりました。
Blizz_RySmith(リード・レベルデザイナー):
チョークポイント(難所)の設計方法は、確かに時間とともに変わりましたね。特にOW1の初期と比較すると顕著です。開発初期、チームはゲームの「秘伝のタレ」となるいくつかの要素に注力していました。その一つが、よりタイトな(狭い)チョークポイントでした。しかし、リリース後にメタやヒーロー、そしてプレイヤー自身が自然と進化していくにつれ、ルートの数や規模に関する哲学を「少しだけ」緩めてきました。とはいえ、今回の東京マップにもかなりタイトな場所はありますし、それは今後もマップデザインの柱であり続けるでしょう。
2つ目の質問への答えは「イエス」です。ヒーローたちの能力を活かせるようにマップを設計しているので、常にテストプレイを行い、各ヒーローがその空間でどう動けるかを微調整しています。基本的には全ヒーローがどのマップでも快適で楽しく遊べるべきですが……あえてそこを調整し、「タイプXのヒーローのためにこのエリアを作る」とか、「ヒーローAにはできるけど他にはできない特定の動き」を意図的に残すこともあります。テストプレイを通じたバランス調整こそが鍵ですね。
電車のギミックについて
HotelTrivagoMate:電車の動きには何かトリガーがあるんですか?それともランダムなイベントですか?
Blizz_Ren(ワールドビルディング・プロデューサー):
第1ポイントが開放された後、電車は14秒ごとに駅を出発し、3.5秒間走行します。
Pixxsta3D:最近のマップでは、環境イベント(南極半島の凍結やネオン・ジャンクションの電車)が起きますが、これは今後の新マップやリワークにおけるトレンドになるのでしょうか?
Blizz_RySmith(リード・レベルデザイナー):
南極半島や東京での環境ギミックへの反応は素晴らしかったので、今後も積極的に取り入れていきたいと考えています(実際にいくつか計画中です)。ただ、すべての新マップやリワークに必ず入れるという目標を立てているわけではありません。
マップの背景ストーリー
MarshmallowNarhwal:このマップの背景にあるストーリーは何ですか?例えばジャンカータウンなら、ジャンクラットのせいで金塊を積んだペイロードを運んでいるという設定がありますが。
blizz_andrew(シニア・コンセプトアーティスト):
ヒントを差し上げましょう!トシロウのワークショップにあるタンクを確認してみてください。それから、歌舞伎座に近づくペイロードを見てみてください。その「色」に注目です。
「ネオン・ジャンクション」のテーマ決定の経緯
Spideraxe30:「ネオン・ジャンクション」のテーマはどうやって決まったのですか?シオンとミズキを巡る1年にわたる物語の展開は、日本マップを作ると決めた時点ですでに動いていたのでしょうか?また、デザイン上の目標は何でしたか?テーマとゲームプレイの両面で、新しい要素を導入する上での課題はありましたか?
Blizz_Peterconcept(アソシエイト・アートディレクター):
「ネオン・ジャンクション」の制作には多くの要素が絡み合っています。
新しいマップを作る際にまず考えるのは、「プレイヤーが心から探索したいと思えるのはどんな場所か?」ということです。開発者である前に、私たちも一人のオーバーウォッチ・プレイヤーですから、楽しくて印象に残り、刺激的な場所はどこかをじっくり考えます。
東京を舞台にしたマップは、実は私がずっと作りたいと思っていたものでした。数年前に「Hanamura」を担当したときは、京都のような伝統的な美しさに焦点を当てました。いつかもう一つの日本の姿、つまり活気に満ちた現代的な東京を称えるマップを作り、その二つが合わさることで、陰と陽のように世界のより完全な姿を描けるのではないかと夢見ていたんです。
「Hanamura」が島田一族を中心としていたので、「ネオン・ジャンクション」は橋元組を象徴する完璧な対比になると感じました。伝統と現代、二つの対立する派閥というコントラストが、この舞台をより意義深いものにしています。
開発が進むにつれ、マップ、ストーリー、ヒーローは自然と一緒に進化していきました。どちらが先というわけではなく、開発を通じてお互いに影響し合っています。マップがヒーローの深みを増し、ヒーローがマップをより豊かで生き生きとしたものにしてくれるのです。
blizz_andrew(シニア・コンセプトアーティスト):
日本ならではのテーマでありつつ、活気ある未来の東京を表現したいと考えました。その中で「シティ・ポップ」が、空間全体に楽しく鮮やかなトーンを維持するための指針となりました。ストーリーに関しては、詳細な設定は開発中に変わることもありますが、少なくともマップのどこかに橋元組の影響を強く出したいとは考えていました。それが最終的に、遠くに見える高層ビルになりました。シオンとミズキの物語が固まるにつれ、マップ内のあちこちにディテールを配置して、物語全体と同期させることができました。
第2ポイントのデザイン意図
Botronic_Reddit:「ネオン・ジャンクション」の第2ポイントが比較的フラットな構成になっているのがとても気に入っています。他のマップのように狭くて混雑しすぎず、地上ヒーローが活躍しやすくなっていますね。フランカーで角度を変えて攻めることもできるし、電車が通ることでスナイパーがエリアを完全に制圧するのを防いでいます。これは最初から意図されたデザインですか?それとも制作過程で生まれたものですか?
Blizz_RySmith(リード・レベルデザイナー):
計画的なものもあれば、制作過程で起きた「嬉しい偶然」もありますが、これは狙って作ったものです!駅のホームから第2ポイントへの射線は地形を調整しながら特に注意した点です。ポイントに到着する手前の上り坂のカーブや、ポイントへの視界を遮る角の遮蔽物なども試行錯誤しました。長い射線が通り過ぎないよう、道路や建物の絞り込み(ピンチポイント)や角度を常に調整しています。
コミュニティフィードバックへの対応
ealousideal-Cell-85:コミュニティのフィードバックに基づいてマップを調整する予定はありますか?(例えば、第3ポイントが非常に狭く、攻守ともに移動しにくい点など)。
Blizz_RySmith(リード・レベルデザイナー):
新しいマップへの地形調整は、後回しにせず早めに対応したいと考えています。実は6月30日にゲームプレイの調整を行いました。ペイロードの速度をわずかに落とし、ゲートの開放待ちやペイロードの動き出しの遅延を増やしています。
レーン設計へのアプローチ
xXxs1m0nxXx:レーン(ルート)設計の観点からはどうアプローチしましたか?マップの片側が常に最強のポジションになってしまうのを避ける工夫はありましたか?OWのマップ設計の基本として、メインと、その両サイドにフランクルートがある「3レーン構造」が一般的です。例えばルート66の第1ポイントなら、道路がメイン、右側にガソリンスタンド、左側に高台があります。この3レーンが明確なマップはプレイ感が良いことが多いですが、1〜2レーンしかないと遊び方が制限されてストレスを感じます。「パライーゾ」の第1ポイントなどは明確な3レーンがないように感じますが、そのあたりはどう考えていますか?
Blizz_RySmith(リード・レベルデザイナー):
素晴らしい質問です。結果的にそう見えることもありますが、私たちは他のゲームが採用しているような「3レーン哲学」をそのまま守っているわけではありません。私たちの秘密を明かさずに言うなら、重視しているのは「いつ、どこでプレイヤーが敵チームに姿をさらすか」という露出の管理と、「味方の元へ、あるいは敵や目標へとプレイヤーを誘導するタイミング」です。空間を広くしすぎたり、レーンを増やしすぎたりすると、チームが分断されすぎたり、一方のチームが有利になりすぎたり、敵を完全にスルーして目標へ直行できてしまうルートができてしまったりするからです。
ハイブリッドルールの決定時期
MrAceofKings:「ハイブリッド」ルールにすることはあらかじめ決まっていたのですか?
Blizz_RySmith(リード・レベルデザイナー):
初日から決まっていました!ゲームモード、場所、物語のポイント、デザインの意図は、エディターを立ち上げる前に真っ先に解決すべき項目です。
今後のマップリニューアル予定
hsidrotilc:今年のストーリーが進むにつれて、「ジブラルタル」のように設定に合わせてリニューアルされる古いマップは他にもありますか?それとも一度きりの試みでしょうか?
Blizz_Ren(ワールドビルディング・プロデューサー):
今年の「チーム4(OW開発チーム)」は、ナラティブ(物語)に本腰を入れています。可能な限り、大きな物語の節目に合わせてマップをアップデートしていく予定です。規模は大小様々ですが。次のアップデートは、皆さんが思っているよりもずっと早く来ますよ!あと、ウィンストンがそろそろギブラルタルを片付けてくれるといいんですけどね。
第3ポイントの設定
Axelyt03:第3ポイントの設定を教えてください。
Blizz_Ren(ワールドビルディング・プロデューサー):
「瑞光座(ずいこうざ)」は、かなり怪しい連中によって運営されている歌舞伎座です。現在は『兄弟の決別(DivideofBrothers)』という演目が上演されています。劇場の奥深くへ進むと、ある人物のオフィスのロビーに繋がっています。劇場全体が、表玄関から隠す気があるのか怪しい「光り輝く山車(だし)」に深く関わっているはずですよ。
不評なマップからの教訓
ndroidrainbow:不評なマップから学んだ教訓と、それが「ネオン・ジャンクション」の設計にどう活かされたか教えてもらえますか?また、社内テストと、リリース後に数百万人がプレイした後の「不満の声」をどう比較していますか?
Blizz_RySmith(リード・レベルデザイナー):
「なぜ特定のマップが人気なのか」を解明する特効薬があればいいんですけどね。それは非常に繊細な問題です。東京マップに関しては、OW2リリース時のリオ以来となる「初の新ハイブリッドマップ」だったので、既存の人気マップの何が好かれているのかを分析し、クラシックなマップからインスピレーションを得ました。
デザイナーにとって、テストプレイこそが最も価値のあるものです。数百万人のプレイヤーの反応をすべて予見することは不可能ですが、可能な限り幅広い意見やプレイスタイルを考慮しようと努めています。チーム内で週に何度もテストを行い、様々なスキルレベルの意見を取り入れています。フィードバックが一方に寄りすぎていると感じたら、他の人を呼んでプレイしてもらい、どう感じるかを確認しています。
シティ・ポップというインスピレーション源
OverBark_:私はシティ・ポップが大好きなので、このマップがそれにインスパイアされていると聞いたときは大興奮でした!音楽のジャンル(あるいはその雰囲気)を実際のマップに落とし込む際の面白さや難しさはありましたか?
blizz_andrew(シニア・コンセプトアーティスト):
気に入っていただけて光栄です!私にとっても、これまで担当した中で特にお気に入りのマップの一つになりました。
目標の一つは、これまでの伝統的な要素が強かった日本のマップとは一線を画す、よりインスピレーションに満ちた未来の東京を描くことでした。
初期段階では「サイバーパンク」という案も出ましたが、私はサイバーパンクを単なるビジュアルスタイルではなく一つのジャンルとして捉えています。伝統的なサイバーパンクに見られるディストピア(暗黒郷)的な未来観は、オーバーウォッチが持つ「ユートピア(理想郷)」的な理想とは噛み合わないと感じたので、別のインスピレーション源を探しました。そこでたどり着いたのが、日本のシティ・ポップです!明るくて楽しく、日本独特の雰囲気があります。
シティ・ポップと聞いて私が思い浮かべるのは、まばゆいネオン、夏の夕暮れ、そして日本のポップカルチャー史における特定の瞬間です。70年代から90年代のハイテクブームを彷彿とさせる、テクノロジーのルネサンスが起きている未来の東京をイメージしました。カセットプレーヤーやデッキ、ゲームパッドといった当時のテクノロジーの視覚的な要素を、建物や街のあちこちにあるディテールのヒントにしました。
ゲームの速さで見落としがちな隠しディテール
Stomach-National:ゲームのスピードが速くて見落としがちですが、隠されたこだわりはありますか?
Blizz_Peterconcept(アソシエイト・アートディレクター):
たくさんありますよ!すでに気づいている方もいるかもしれませんが、いくつかご紹介します。・攻撃側リスポーン地点の奥にある映画館のポスターは、チームメンバーが「自分たちが見たい番組」を想像して作った架空のアニメです。恋愛もの、冒険もの、メカアニメなど色々あります。
・アンドリューも触れていましたが、防衛側リスポーン地点の仮面の上にある壁画は「龍を狩る鬼」を描いています。鬼(と虎)は橋元組を、龍は島田一族を象徴しており、二つの勢力の現在の関係をメタファーとして表現しています。
・「Pylon」と書かれた赤いビルの2階には「AW」というブティックがあります。ショーウィンドウを見ると、最新コレクションが入荷したばかりのようです。
・攻撃側の前線リスポーン地点の裏には「SpectralSystems」という小さな電器店があります。噂では「妖怪」のメンバーがよく出入りしているとか……。
・最後に、防衛側の前線リスポーン地点の近くには、かつてのキリコの父親の作業場があります。彼はここで様々な動物の霊を用いた「アニマル・スピリット・ウェポン」の試作を行っていました。巨大な炉がフル稼働している様子を想像すると、当時の活気が目に浮かぶようで楽しいですよ。マップの至る所に小さな物語を隠しておくのは、私たちが最も好きな仕事の一つです。
blizz_andrew(シニア・コンセプトアーティスト):
最後の防衛側リスポーン地点の壁に掛かっている仮面の中には、ある「橋元の長老」のものも混ざっています。
参考にした実在の地区
P4rtyxxan1m4l:このマップのビジュアルについて、特定の都市や地区を参考にしましたか?
blizz_andrew(シニア・コンセプトアーティスト):
はい!渋谷、秋葉原、銀座といった東京の様々な地区から大きなインスピレーションを受けました。
既存の日本マップとの差別化
Godela__GA:既存の日本マップと差別化するために、アート面でどのようなアプローチを取りましたか?
blizz_andrew(シニア・コンセプトアーティスト):
「シティ・ポップ」をビジュアルの基盤にしつつ、80〜90年代のテクノロジーやポップカルチャーを細部のガイドにしました。カネザカやハナムラにある伝統的な要素とは異なる角度を探し、今回の伝統的なシンボルとして「歌舞伎座」を選びました。
マップ制作で一番好きな工程
Far_Truth_3362:アートチームやデザインチームがマップ制作で一番好きな工程は何ですか?
blizz_andrew(シニア・コンセプトアーティスト):
アート側としては、各所にある「見どころ(POI)」やヒーローに関連した小道具(プロップ)を作ることですね。物語を伝えたり、プレイヤーの目を楽しませたりできるからです。私のお気に入りは、ポイントAを見下ろしている巨大なメカです。
それから看板も好きです。その空間に「生活感」を与え、プレイエリアの外にも広い世界があると感じさせてくれますから。東京らしい「看板の多さ」を再現しつつ、プレイヤーの視覚的な負担にならないよう密度をコントロールするのは大変でしたが、うまくバランスが取れたと思います。
YOASOBIの正史扱いについて
Automatic_Command_52:「YOASOBI」という現実のバンド名がマップに登場しますが、これはオーバーウォッチの正史(カノン)に含まれるのでしょうか?
Blizz_Megan(コミュニティチーム):
ナラティブに関する質問ですね。今は直接はお答えせず、皆さんの想像にお任せしておくのが一番楽しそうです!