開発がヴェンデッタの”裏側”を公開

本日公式の開発者ブログが更新。

新ヒーロー「ヴェンデッタ」の詳細や開発の裏話について言及されています。

1週間を振り返る:ヴェンデッタの裏側をご紹介

アリーナ・ヴィクトリアを煌々と照らすスポットライト。その逆光を受ける形で浮かび上がる1つの人影が、獣の足跡を残しながらアリーナの中心へと近づいていく。観客の喝采を一手に浴びるそのシルエットの正体は、オーバーウォッチと深い因縁を持つ剣闘士。その名も"復讐の狼"、ヴェンデッタ――。

トールビョーンの2倍ほどの大剣を獲物とする新ダメージヒーロー「ヴェンデッタ」が先日、最新のヒーロー・トレーラーとあわせて正式に公開されました。アクション・シーンたっぷりなこのトレーラーをまだご覧になっていない方は、ぜひこちらからチェックしてみてください。

また11月27日からは、ヴェンデッタのヒーロー・トライアル(先行体験)が「オーバーウォッチ 2」のゲーム内で実施されます。

新たな近接系ダメージヒーローのゲームプレイがどのようなものか楽しみにしている方も多くいるはず。そこで今回の記事では、開発チームのコメントを交えながら、ヴェンデッタのさらなる詳細と開発秘話をお話します。復讐(ヴェンデッタ)の化身に込められたコンセプトは何か――その真相をご紹介しましょう。

トレーサーやガニー&チャチャ(マウガの武器)よりデカい剣

グラディエーターの誕生

ヒーロー・トレーラーでも言及されているとおり、ヴェンデッタは奪われた生来の座を取り戻すべく復讐の道へと足を踏み入れたヒーローです。ですが、ヴェンデッタ開発の初期段階においては、ラマットラ率いるヌルセクターの襲撃からイタリア国民を守る剣闘士という、この最終案と全く異なるバックストーリーも検討されていました。最終案が「悪」のストーリーとするなら、この別案は真逆の「善」と言えるでしょう。

しかしながら、最終的に「善」よりも「悪」寄りのバックストーリーが採用されることになりました。理由はいくつかありますが、一番は「ヴィランの方がシビれる」という単純明快なものです。ヴェンデッタのストーリーを監修したシニア・ナラティブ・デザイナーのジュード・ステイシーは次のように語ります。

「正真正銘のヴィランと呼べるヒーローは『OW』に長らく存在していません。なのでヴェンデッタには、誰がどう見ても"これは悪役だ"と思えるような性格を付けていきました」

ヴェンデッタのデザインの骨格は早期から固まっていきましたが、その肉付けの作業はというと、整合性がまだ欠けていたこともあり難航しました。

「新ヒーローの開発は、バックストーリー、アビリティ、コンセプト・アートの3つの要素で成り立っており、このうち最後のコンセプト・アートは特に、他の2つに大きな影響を与えます。ですが今回は、ロールとアーキタイプが先に固まったので、私たちはヒーローのビジュアルとシルエットについて検討を重ねることにしました」

こう語るシニア・ゲーム・プロデューサーのケニー・ハドソンら開発チームが当初から望んでいたのは屈強なビジュアルを持つヒーロー。チームはクルセイダーやグラディエーターなどのたくましさあふれる戦士とそのアートをリサーチしました。

プロトタイプは、今回のヴェンデッタの開発において合計3つ作られました。1つ目は長距離からの攻撃も可能なヒットスキャン、2つ目は中距離に特化したアサシン系、そして3つ目が近接戦闘特化型です。最終的には、近接戦闘というコンセプト自体に魅力があっただけでなく、開発チームの長年の夢でもあった「途方もない大きさの剣を振り回すヒーロー」を実現するチャンスということもあり、3つ目が採用されました。ちなみに、この大剣のアイデアを実現するうえで、チームは巨大なブレードを武器とする主人公が活躍する往年のゲーム・シリーズやアニメ作品を参考にしています。

広がる「OW」ユニバースの描写

ヴェンデッタは、かつてガブリエル・レイエス(リーパー)に葬られたタロン幹部アントニオ・バルタロッティの娘であるなど、「OW」のストーリーに血筋から大きく絡んでいるヒーローです。しかし、特筆すべきはその出自や波乱の人生だけではありません。彼女のバックグラウンド全体が「OW」ユニバースにおいて重要な意味を持っています。

ナラティブ・チームは何年も前から、イタリア出身のヒーローというアイデアを温めていました。チームにとってヴェンデッタは、そのアイデアを具現化するだけでなく、21世紀末を舞台とする「OW」の世界観をより豊かに描くチャンス。イタリアの未来像はこれまでも、「OW2」リリース時にプッシュ用マップ「COLOSSEO」、その後スタジアム用マップ「ARENA VICTORIAE」という形で描かれてきましたが、ヴェンデッタのストーリーはその核心へと迫る機会でもありました。

「ヴェンデッタは、アリーナの詳細とそのイタリア文化における重要性を描くチャンスでした」

ジュードがこう述べるように、コロッセオは「OW」で、イタリア文化を代表するエンターテインメント、同国の誇りとして描かれています。ヴェンデッタはこのコロッセオで名声を勝ち取り国民的スターへと上り詰め、その地位と影響力を活かしてヨーロッパの特権階級と関わりを持つようになるわけですが…このバックストーリーは今後の展開にも関わってくる要素なので、こうした点にもどうぞご注目ください。

イタリア文化はヴェンデッタの細部にもちりばめられており、ジュードらナラティブ・チームの主導、イタリアのローカライズ・チーム監修のもと、古代ローマ帝国の栄光と権力にまつわるさまざまな要素が武器名やボイス・ラインに盛り込まれています。

たとえば、ヴェンデッタのコロッセオでの通り名であると同時に、ティザー時の彼女の仮称でもあった「ラ・ルーパ」は、ローマ建国神話の登場人物、ロムルスとレムスの育ての親とされる狼(イタリア語:La Rupa)に由来します。彼女の大剣「パラティーノ・ファング」の名前も、彼ら双子が育ったとされるローマの丘「パラティーノ」から採られたものです。

イタリアのローカライズ・チームと共同で作り上げられたイタリア語のセリフは多岐にわたります。「OW」ユニバースとヴェンデッタの関わりの深さを感じさせるセリフも中にはあるので、こうしたディテールに目を配るのも面白いかもしれません。

「狼から逃げられると思ったか!」

「OW」ユニバースで輝く彼女の個性はゲームプレイ面にも見られ、これまでのヒーローになかったような独自のアビリティを持っています。ヴェンデッタの開発に携わったストライク・チームは一度「大きな鎧を被ったクルセイダー」というアイデアを検討しましたが、彼女のシルエットを独自にするべく、さらなるアイデアを模索しました。その過程で考案されたのが、軽い身のこなしと強力な近接攻撃を組み合わせた、あのゲームプレイです。

ヴェンデッタは、ラインハルトやブリギッテら、近接攻撃に特化したヒーローと比べて高い機動性を誇り、敵との間合いを積極的に詰めたくなるようなアグレッシブな戦闘スタイルを特徴としていますが、これもデザイン・チームの意図によるものです。

パラティーノ・ファングは大剣であると同時に、ヴェンデッタの高機動に大きく寄与する重要な武器です。従来の鋼ではなく硬質光の刃とすることで、武器としての美しさも両立させているなど、ヴェンデッタのキャラクターにふさわしいさまざまな特徴を併せ持っています。ですがこの大剣、「一人称視点で常に大剣が見えるようにしつつ、あらゆるアングルからの斬撃を正確に表現する」という難題ゆえに、実はストライク・チームを悩ませた要素でもありました。

また、パラティーノ・ファングの本来の刃の色は赤。赤は敵のアウトラインとしてすでにUIに導入されているため、VFX面でもこの大剣は難題の塊でした。

なお、このVFX面の難題は、味方のヴェンデッタの刃を黒/白で表現しつつ、敵のものを本来の赤で表現するという形で解決しています。刃の真の色をマッチで見かけた際は、交戦にいつも以上に注意しましょう。

狼を侮るべからず

父の死などの悲劇を通じて、侮ることの危険性を以前からその身に叩きこんでいるヴェンデッタ。皆さんもヴェンデッタをプレイする際は、そんな彼女の教訓を胸に刻んでおく必要があるかもしれません。

たとえば、ヴェンデッタのヒーローとしての難易度。これは一部の開発者も言及していることですが、彼女のゲームプレイは見た目以上に奥深く、コンボで繰り出せる縦斬りに高度なエイムが要求されるなど、その大きなポテンシャルを最大限に引き出そうとするとかなりのスキルが必要です。ヴェンデッタの特徴である高い機動性も、交戦からの離脱を意識せずに使えば格好の的になるなど、時として仇になることがあります。

あと、"侮る"と言って忘れてはならないのが、他者から見くびられ、彼らに見返そうと奮闘するヴェンデッタとそのストーリーでしょう。彼女には自己投影できる要素が明確に盛り込まれており、ジュードも次のように述べています。

「ヴェンデッタは疑うまでもなく悪役ですが、その一方で彼女の動機は共感あるものにしています。女性を中心とする大勢の人がヴェンデッタと同じように、誰かに軽視されたり、相手が真摯に受け止めてくれないがために、必至になって努力したことやあるべき見返りが認められないという経験をしたことがあるでしょう。自分の求めるものは決して向こうからやって来ない。ならば、自らの脚で追いかけ、自らの手でつかみ取るしかない…そう悟ったのがヴェンデッタなのです」

ヴェンデッタのヒーロー・トライアルは11月27日スタートです。戦いと復讐に彩られた物語と近接特化のゲームプレイ――その片鱗を先行体験で一足先にご体験ください。

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