【OW開発秘話】Jeff Kaplan氏、5時間超ロングインタビュー - Titan失敗の真相、OW2 PvE中止の裏側、新作ゲーム開発を語る
Overwatchの生みの親、Jeff Kaplan氏が5時間を超える大型インタビューに登場しました。
OWの元となったTitan開発の失敗(8300万ドル)、Overwatch 2のPvEモード中止に至った経緯、そしてBlizzard退社後に立ち上げた新スタジオKintsugi Yamaでの新作ゲーム「Legend of California」の開発について、これまでにない詳細が明らかになりました。
Here's my conversation with Jeff Kaplan, a legendary Blizzard game designer of World of Warcraft and Overwatch, which are two of the biggest, most influential games ever made. Jeff is one of the most genuine & awesome human beings I've ever met: kind, thoughtful, hilarious, and… pic.twitter.com/kw14nET8SQ
— Lex Fridman (@lexfridman) March 11, 2026
内容まとめ
- Titan開発に8300万ドル投資も失敗、7年で開発中止
- OW2のPvEモード中止は元CFOからの収益圧力が原因
- 「収益目標を達成しなければ1000人レイオフ、責任はお前にある」と脅された
- 新スタジオKintsugi Yamaを設立、34人でCFO不在
- 新作「Legend of California」は1800年代ゴールドラッシュ時代が舞台のサバイバルゲーム
Project Titan:8300万ドルの失敗
Project Titanは「WoWキラー」として開発された次世代MMOでした。
未来の地球を舞台に、プレイヤーは夜は秘密諜報員、昼はビジネスを経営するという野心的なコンセプトでした。
開発の実態:
- 140人のチームを編成
- 新エンジンをゼロから開発
- 全プレイヤーが単一サーバーで遊べる世界を目指す
- エンジンが機能せず、開発者の生産的稼働時間は50%のみ
- 統一されたアートディレクション不在
- 明確なゲームプレイループが存在しなかった
Kaplan氏は2009年時点でプロジェクトの失敗を確信していました。2010年にはCEOのMike Morhaime氏にプロジェクト中止を懇願しましたが、実際に中止されたのは3年後の2013年、総額8300万ドル(130億円)を費やした後でした。
「小規模で明確なビジョンを持つチームは、無限のリソースを持つ大規模チームに勝る。Titanは業界最高の開発者を擁していたが、誰も『ノー』と言えなかった」
Overwatch:灰の中から誕生
Overwatchは、Titanの失敗から生まれました。Kaplan氏はTitanの散在していたヒーロー能力を個別のキャラクターに凝縮しました。
開発の方針:
・「ジャンパー」はトレーサーに、「Gun Jack」はリーパーに
・6クラス100アビリティではなく、50ヒーロー各1-2個の特徴的メカニクス
・2年以内にリリースという条件
・WoWレベルの収益を生み出すという条件だった(無視した)
Kaplan氏は収益目標を無視し、40人のチームが実際に完成できるゲームに集中、そしてオーバーウォッチが誕生しました。
Overwatch League:終わりの始まり

Overwatch Leagueは投資家に「eスポーツの未来」として売り込まれました。
地域チーム、選手保護、Twitchとのメディア権契約など、書類上は素晴らしいものでした。しかし実際には、開発の重荷となりました。
Blizzardの幹部は億万長者のチームオーナーに収益を過大約束し、チケット販売やグッズ販売でギャップを埋められなくなると、収益化とリーグ向けコンテンツ配信のプレッシャーがKaplan氏のチームにかかりました。
一方、Overwatch 2のPvEビジョン(ゲームの魂となるはずだった協力型ストーリーモード)は遅延し続けました。Kaplan氏は、2019年までにOW2を出荷するよう要求する幹部、PvEに集中するためライブイベントを放棄したい開発者連合、そして持続不可能なレベルでリソースを消費するOverwatch Leagueの義務との間で板挟みになりました。
退社の決定打:元CFOからの脅し
転機は、Blizzardの元CFOがKaplan氏をオフィスに呼び出した時でした。
「Overwatchは特定の継続収益目標を達成しなければならない。さもなければ会社は1000人をレイオフする。そしてそれはお前の責任になる」
これが、Blizzardがもはや開発者によって運営されていないという最も明確なシグナルでした。Kaplan氏は2021年に退社し、最終的に出荷されたOverwatch 2は、彼が戦い続けてきた協力型体験とはほとんど似ていないものになりました。
※CFO(Chief Financial Officer)は「最高財務責任者」のことで、企業の財務・会計・資金調達・IR・投資戦略を統括する経営幹部を指すポジション
新スタジオKintsugi Yama設立
Kaplan氏は共同創設者Tim Ford氏と共に、34人のチームでKintsugi Yamaを設立しました。スタジオ名は、割れた陶器を金の漆で修復する日本の芸術「金継ぎ」に由来します。
スタジオの哲学:
・傷を隠すのではなく、強調する
・不完全さを受け入れる
・完璧の追求を避ける
・ビジネスではなくクラフトとしてゲームを作る
・CFOは不在
新作「Legend of California」
Kintsugi Yamaが開発中の1800年代のゴールドラッシュ時代のカリフォルニアを舞台にしたオープンワールドサバイバルゲームです。
ゲームの特徴:
・架空の歴史における島版カリフォルニア
・難易度は各サーバーごとに変化
・画家Albert Bierstadtの壮大な風景画にインスパイア
・採掘者、カウボーイ、鉱山など時代に忠実な雰囲気(歴史的に正確ではない)
・Blizzardで作ったものより孤独でエッジの効いた作品
・サバイバル、探検、危険な世界で小さく感じることに焦点
Kaplan氏がRustを5000時間以上プレイした経験が、デザインに大きな影響を与えています。
2026年中のリリースが予定されています。
クリエイターへのアドバイス
「私たち(開発者)は一般的にクラフトへの愛に集中しすぎて、それに没頭し、それをすることを愛している。そして私たちは冷酷ではない。そして、そのような野心は持っていない。私たちには違う種類の野心がある。しかし、特に成功する幸運に恵まれると、非常に冷酷で非常に野心的な世界が存在する。そして何らかの理由で、私たちは自分たちを彼らに与え続けている。だから自分たちを与えるのをやめる必要がある。World of Warcraftを作った時、BlizzardにはCFOがいなかった。World of Warcraftを作るのにCFOは必要ない。アーティスト、エンジニア、デザイナー、プロデューサー、そしてオーディオチームが必要なだけだ」
数字で見るKaplan氏のキャリア
・EverQuestプレイ時間:約6,500時間
・Rustプレイ時間:約5,000時間
・Blizzard入社時の年俸:35,000ドル(2002年5月)
・Titan開発予算:8,300万ドル(7年間)
・Overwatch開発チーム:約100人(ローンチ時)
・Kintsugi Yamaチーム:34人(CFO不在)
まとめ
Jeff Kaplan氏の5時間超インタビューは、Overwatchの裏側、Titan失敗の真相、そしてBlizzardを去った理由を詳細に語った貴重な証言です。
元CFOからの収益圧力によってOW2のPvEモードが中止に追い込まれ、最終的に退社を決意した経緯が明らかになりました。
現在は34人の小規模チームでCFO不在の新スタジオを立ち上げ、「Legend of California」という新作ゲームの開発に情熱を注いでいます。
