OWシステムデザイナーGavin Winterが語るマッチメイキング・ランク・マップ投票・ヒーローBANの全貌 - Coaches Corner ep.2まとめ
OverwatchのシステムデザイナーであるGavin Winter氏が、マッチメイキング・ランクシステム・チャレンジャーシステム・マップ投票・ヒーローBAN・ソーシャル機能など多岐にわたるシステムについて赤裸々に語った「Coaches Corner」第2回が公開されました。
ホストのSpilo氏とコーチRalph氏との懇談形式で、開発内部の考え方や今後の方針が明かされています。
動画情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ゲスト | Gavin Winter(Blizzard システムデザイナー) |
| ホスト | Spilo、Coach Ralph |
| 動画URL | https://www.youtube.com/watch?v=BOILFbXXQhU |
Gavin Winterとは
2021年入社。ピンシステム・ヒーローBAN・マップ投票・チャレンジャーシステムなど「コアゲーム」に関わるシステムを担当するデザイナー。今回が2度目の出演となります。
マッチメイキングの仕組み
Gavin氏はマッチメイキングを「道路と車」のメタファーで説明しました。
- 全プレイヤーはMMR順に1本の長い道路に並んでいる。あなたのMMRがあなたの「家」の住所
- キューに入ると、あなたの家から2台の車が反対方向に走り始め、電気のついている家(=キュー中のプレイヤー)を見つけてリストに追加する
- リストに10〜12人以上集まった瞬間、ランダムにマッチ候補を大量に生成し始める
- 生成されたマッチ候補はチェックリスト(ロールMMR差・勝率均衡・ピン・グループサイズ等)に照らして判定され、大多数は破棄される
- 時間が経つほどチェックリストの基準が段階的に緩和される。ロールMMR差など優先度の低い項目から先に妥協される
- 勝率均衡(40〜60%の範囲)は最後まで高優先度で維持される
ランクシステムとMMRの関係
Season 9以降、ランクとMMRは完全に一致しています。他のゲームのように内部MMRとは別に表示ランクを設けるオフセットは存在しません。
- ゴールド2は「ゴールド2というMMR値」そのもの。隠された別数値はない
- これによりシステムの透明性を最大化することが目的
- デメリットとして、チーターへの補填などMMR操作が「実際のスキル変動」として扱われるため複雑になる。現在この問題に対応中
なぜランク減衰がないのか
よく求められる「ランク減衰」が実装されない理由についても言及がありました。
- ランク=MMRである現行システムでは、減衰=実際のスキル値の強制引き下げを意味する
- しばらく休んだだけのチャンピオンプレイヤーのMMRを下げると、チャンピオン帯のロビーに実力がチャンプ相当でないプレイヤーが混入し、マッチ品質が大幅に低下する
- 将来的に「Champion帯だけMMRとランクを切り離す」という選択肢はあり得るが、現状技術的に実装したくないとGavin氏は本音を述べた
- クイックプレイには日次MMR減衰が存在するが、コンペティティブにはない。ランクの減衰はシーズンリセット時のみ発生する
チャレンジャーシステムについて
- 導入目的は「ゲームをほとんどプレイせずトップ500に居座る状況」を防ぐため
- 当初はプレイ時間に重きを置きすぎたチューニングミスを認めた(「それは私のミスです」)
- 現在もまだプレイ時間寄りすぎると内部では認識しており、スキル重視に寄せていきたい方針
- ランク順に並べると内部でチャレンジャースコア順になるバグが現在も存在、修正予定
- Gavin氏が個人的に気に入っているのはUI/UX面の改善(検索機能・ライブ観戦機能など)
シーズンリセットについて
- 今シーズンのリセットは新規・復帰プレイヤーが多かったため、マッチ品質への影響がほぼゼロに近かった(通常は約2週間の品質低下がある)
- 問題だったのは新規アカウントのシーディング(初期ランク配置)が高すぎた点。次回リセットでは修正予定
- チーター補填バッチの頻度が低かった点も問題。ほぼ毎日実行に変更中
- マッチ品質の評価指標:投入側(MMR差)と出力側(一方的な試合の発生率)の両方を確認している
スマーフ対策
- 具体的な対策内容は「武器にされる」ため非公開
- 「改善できる余地は大きい」とGavin氏は認めており、社内でも最近議論されている
- 特に難しいのは障害を持つプレイヤーが特殊コントローラーを使うケースとXIMデバイスの区別が技術的に難しい点
- Champion帯でキューが極端に長くなるプレイヤーが旧アカウントを使う「同情できるスマーフ」についても問題を認識
マップ投票の最新状況
- 攻守表示の追加は「チームごとに投票意図が分かれて面白くなるから」という意図
- ランドスライド(強制マップ固定)について:現在約5%の試合でランドスライドが発生しており、開発チームはこの数字に満足している
- 「投票で負けたマップ」は次回そのプレイヤーのリストで優先的に上位表示される
- 誰にも投票されなかったマップはリストで下位に移動する仕様
- ランダム選択肢は全票の約25%を占めており、当初から実装すべきだったとGavin氏は自己反省
- フラッシュポイントは高ランク帯では人気だが中間ランク帯では不人気。これが中間ランク帯プレイヤーの成長に若干影響する可能性があると認識している
マップインセンティブ(南極半島)について
- 南極半島は通常行うブーストなし(自然な状態)でKing's Rowに並ぶ高い選択率を記録
- インセンティブはシーズン開始から2週間で消滅する仕様
- コンペポイント・XPボーナス・タグの組み合わせが効果的だったと評価。ただしインフレへの懸念も共有している
ヒーローBANシステム
- マップ投票より好意的な反応を得ており、開発チームとして非常に満足している
- BANはほぼ「対戦して嫌だから」という感情ベースで行われており、勝率を意識したBANは高ランク帯の少数に限られる
- ソンブラのBANは「弱体化で減ったのではなく、新ヒーローの登場で減った」という具体例を挙げた
- 現行のBAN順序はスネークドラフト方式:A→B→B→Aの順
第5BAN「ロビーBAN」について
現在プレイテスト中の新システムについても言及されました。
- 通常のロール制限でBANできなかったヒーローに対し、両チーム合計で一定票数を超えた場合に追加でBANする仕組み
- ロール制限を維持した理由は「3ロールすべてのBANでヒーロープールが浅いプレイヤーが対応できなくなる」という懸念から
- このシステムにより投票の動機付けも高まることを期待している
- 実装確定ではなく現在検討・テスト中の段階
PMAシステムとソーシャル機能
- PMAシステム(マッチ後推薦)は全体的に好評。Gavin氏の妻が「MVP取れた!」と喜んでいたエピソードも紹介
- 現在の課題:パーティリーダー以外には再キューボタンがグレーアウトして押せないように見える問題、二重カウントダウンのバグ
- マッチ後の音声チャット(スパイシーマッチ)も今のところ好評
- オンラインゲームでの友人形成がMMOより難しい理由として「MMOはお互いに助けを必要とするタスクが多いが、OWはゲームそのものが目的」と分析
- グループファインダー(LFG)の再実装がGavin氏個人の「最もやりたいこと第1位」。ただし現在は開発中ではなく、不適切テキストへの対策を含めた現代的な設計が必要
Gavin氏からのメッセージ:プレイヤーに知ってほしいこと
「すべてのゲームのすべてのプレイヤーに気づいてほしいこと」として、以下を挙げました。
学び始めの最初の段階では時間とスキルは確かに比例するが、それは極めて短期間で終わる。Overwatch 1でコンペのプレイ時間が最も多いプレイヤーはブロンズMMRだった。時間を重ねるだけでランクは上がらない。同じ1時間を5000回繰り返すのではなく、5000時間分の新しい学びを積み重ねることが重要。
Reddit コメントへのGavin氏の返答
動画公開後、RedditにGavin氏本人が登場して視聴者の質問に直接回答しました。
Q. プラチナ2でソロQしていたのにD3PTと当たった。ラッシュアワーで即マッチングなのにロールMMR差がひどすぎる。モディファイアもなかった。
即座にマッチが見つかった場合、あなたはシードパーティではなかった可能性が高い。相手チームがずっと長く待っていて、その試合の形に「何とかはまる」タンクを待っていたのではと思われる。シードパーティになるのは稀で、あなたがロールMMR差の広い枠に入ったのはそのため。
Q. PTと当たったときのモディファイアはないのか?
実は完全に隠れた形で存在する。4〜5人の大グループには追加ハンデMMRを付与するシステムがある。ただしマスター以上の高ランク帯にしか適用していない。ゴールド・プラチナ帯ではグループの有無が勝率に統計的な差をもたらさないことがデータで示されているため。この仕組みをもっと見える形にすることは良い指摘だと受け止めている。
Q. 複数アカウント間でランクが大きく乖離するのはなぜか?
多くの場合、使うヒーローが違ったり、メインアカウントより自由にプレイできる心理的な余裕が生まれることで実力発揮度が変わるため。加えて序盤の数戦で運が絡む部分もある。平均スキル帯に近いプレイヤーほど序盤の運の影響が大きく、落ち着き先まで50ゲームほどかかるケースもあり得る。
Q. ロールMMR差をもっと厳密にすべきでは?特にタンクは。
「実はすでにそうしている。タンクは今日時点で最も高優先度でロールMMR差を管理しているロール」とのこと。ただしロールMMR差を厳しくしすぎるとキュータイムが大幅に悪化するため、トレードオフがある。
Q. 毎回同じ説明ばかりで具体的な問題点に踏み込まない。改善に向けて最も重要な課題は何か?
- マッチメイカーの信頼性改善で最優先したいのはスマーフ対策。人数は少ないが試合予測の精度を大きく乱す
- Champion帯のスマーフ問題はキュータイム対策として発生しているが、そのアカウントをChampionに正確に配置するとランクの価値を損なうため、配置の上限を調整して対応してきた
- ゲームプレイ中のブーストについては、相手がチートしているならシステムで対処できる。純粋に上手いプレイヤーのブーストにはスマーフ対策技術の向上が必要で、現在検討中
- 新しいマッチメイキングエンジニアが直近でコードをチェックインしたばかりで、多くの改善が計画されている
Q. シーズンリセット前後でプレイヤーのSR変動はどう推移しているか?
MMR曲線はリセット前後で正規分布を維持している。ハードコアプレイヤーはおおよそ2週間でリセット前に近いSRに戻るが、曲線全体が元の形に戻るには1シーズン以上かかることが多い。
Q. ソロタンクとPTタンクの勝率をロール別に調べたことはあるか?
現在のダッシュボードはグループvsソロをランク別に見ることはできるがロール別には分解できていない。この具体的な質問について調査する、と回答。
まとめ
Gavin Winter氏はマッチメイキングの仕組みから今後のシステム改善方針まで、開発者として率直に語りました。ランク減衰が実装されない理由、チャレンジャーシステムの反省点、ロビーBANの検討状況など、普段は明かされにくい内部の議論が多数共有されています。「プレイ時間≠スキル」というメッセージは特に印象的で、ランク制度の本質を理解する上でも重要な視点です。
