ウーヤンのアニメーション開発秘話が公開

今週の開発者ブログでは、ウーヤンのアニメーション開発の背景が解説されています。

内容は下記のとおりです。

■アニメーション制作の流れ

・新ヒーローの動作は、まずナラティブチーム(キャラの設定や性格を決める人たち)との打ち合わせからスタート。

・性格や設定に合った動きになるよう、チームで「どんな動きがふさわしいか」を丁寧に決定。

・初期段階では他ヒーローのモーションを仮使用(例:ウーヤンの武器→モイラのオーブ)してテスト。方向性が固まってから本制作へ。

・地味だけど使用頻度が高い動作(歩き・待機・武器発射)を最初に作る。ここがズレてると後の派手なアニメーションも全部ズレるから大事。

・プレイテストを繰り返し、Team 4内外からフィードバックを集めて、音・VFXなどと連携しながら微調整。

・制作には最大で1年かかることもあるそう。

■ウーヤンに取り入れた要素

・ウーヤンは「柔よく剛を制す」がテーマのキャラ。

・当初は複数の武術の動きを検討していたが、最終的には流れるような動きが特徴の太極拳が最適だと判断。

・近接攻撃のモーションにはブルース・リーの“ワンインチパンチ(寸勁)”を元にした演出を導入。

■杖の使い方に込めた工夫

・通常のヒーローと違い、杖を戦闘の構えでずっと前に出していると見た目が不自然だった。

・解決策として、待機ポーズでは杖を脇に抱え、攻撃動作に入る際に“流れるように杖を構え直す”動きに。

・アビリティ「守衛波浪」では、ラインハルトのハンマーのようなアニメーションではなく軽い杖に合うように「跳ね返る」動きを採用。

・杖を肩の上から素早く弧を描いて振ることで、“速さ”と“軽やかさ”を表現。

■アニメーションチームの哲学

・ウーヤンの動きには「リアリティ」と「スタイル」の両立が求められた。

・単にカッコいいだけでなく、ゲーム中に見えるすべての動きに意味があり、背景や性格が反映されるよう設計。

・「どのキャラがどう歩くか」「どう構えるか」などの細部にまで、キャラ性が宿るように作られている。

管理人
全文は下記より

1週間を振り返る:ヒーローのモーション制作の裏側

皆さん、こんにちは!「1週間を振り返る」初登場の「オーバーウォッチ 2」アニメーション・チームです。ありがたいことに、皆さんからアニメーション制作の舞台裏を知りたいという声を多数いただいたので、今回は私たちがヒーローの動作を生み出す過程についてご紹介します。

待機ポーズから派手なアルティメット発動モーションまで、さまざまな動作を作りヒーローに命を吹き込むのが私たちの仕事です。この記事では、そんなヒーローのモーションの制作過程の全貌に加えて、ウーヤンの力強くも柔らかい特徴的な所作の誕生秘話についても深堀りします。

ヒーローが動き出すまで

新ヒーローのアニメーション制作は、まずTeam 4メンバーから成る少数精鋭の専門チームとの打ち合わせから始まり、そこで私たちは新ヒーローの生い立ちや元となるインスピレーション、おおまかな雰囲気を掴みます。専門チームの中でも特にナラティブ・デザイナーとは密接に連携し、どのような動きがそのヒーローの背景や性格に合うかを探ります。例えばの話ですが、ソルジャー76の堅苦しい動きをマーシーのようなヒーローにさせてしまうと、かなりちぐはぐな感じになってしまいますよね。こうした事故が起きないよう、制作を始める前にヒーローの基盤となる情報をしっかりと固めておく必要があるのです。

次に、そのヒーローの大まかな“たたき台”となるアニメーションを作ります。こうした初期のアニメーションは他の既存ヒーローのアニメーションを転用して作ることが多く、たとえばウーヤンのメイン武器には、モイラのオーブを利用しました。こうしてヒーローをプレイテストの場に送り出し、方向性が正しいかどうかを確かめます。専門チームの意向に沿えなければ、また一から作り直しです。

専門チームと方向性について合意すると、ようやく本格的なモーション制作が始まります。「最初に派手なアビリティ発動モーションを作るんでしょ?」とお思いの方もいるかもしれませんが、実際にはもっと地味な動きから取り掛かります。リスポーン・エリアで静止した際の動き、メイン武器を使った際の動き、マップ中を駆け回った際の動き──目にする頻度も高いこうした一連の基本動作がヒーローの性格と完璧にマッチするように仕上げてからでないと、アルティメットのような複雑な動作には移れません。

制作過程の大部分を占めるプレイテストでは、Team 4の残りのメンバーに可能な限りヒーローをテストしてもらい、ヒーローに対する認識をすり合わせます。そして、テストから得た新たな視点やオーディオチームの音声素材、エフェクトの演出などからインスピレーションを受け、アニメーションをブラッシュアップしていきます。こうした制作過程は最初の打ち合わせから完成まで全体を通すと、なんと丸一年かかることもあります。

ウーヤンのモーション制作秘話

シーズン18でデビューしたウーヤンは快活で機敏な青年。大学での成績には直接表れないような修練を積み重ねてきた努力家です。彼の個性を表現するアニメーションを企画するにあたって、私たちはまず、さまざまな武術を動きに取り入れました。しかし、武術の大半の型は「水の柔軟さを体現するサポートヒーロー」というコンセプトに対してあまりにも攻撃的すぎました。

そんな中で、まさに彼の動きにぴったりだったのが太極拳でした。流れるような動きを特徴とする太極拳は、他の武術と組み合わせた結果、「柔よく剛を制す」というウーヤンのコンセプトとうまく合致しました。

私たちはこの総合武術の観点を、ごくシンプルなものを含めウーヤンのあらゆるアニメーションにできる限り取り入れています。実を言うと、ウーヤンのクイック近接攻撃は、あの伝説的な武術家であるブルース・リーのワンインチ・パンチ(寸勁)をモチーフとしています。彼が最小限の動きで素早く繰り出す強力なパンチは、まさにウーヤンの修練の成果の体現とも言えるもの。ウーヤンの近接攻撃をスローで見てみると、元ネタとなったとあるポーズを見つけられるはずです。私たちが毎フレームに込めたディテールを、ぜひその目でお確かめください。

動きに磨きをかけるには

ウーヤンは水学部で抜きん出るため型にはまらない考え方を模索しますが、私たちも同じように彼の性格を現実的かつクリエイティブに表現する方法を模索しました(なので、彼の気持ちはとてもよくわかります)。

ヒーローの大半は待機ポーズで攻撃の構えをとっています。「ピースキーパー」を構えるキャスディや、「ヘルファイア・ショットガン」を構えるリーパーを思い浮かべればわかりやすいでしょう。当初、ウーヤンにも同じように杖を見せた戦闘態勢のポーズを取らせてみましたが、基本的に他のヒーローに杖を向けた状態で駆け回っているため、どこか違和感がありました。また正面から見たときの全体的なシルエットも、杖が身体と同じ方向を向いていたがために認識しづらくなっていました。

ウーヤンのメイン攻撃の初動をよく見てみると、私たちが試行錯誤の末にどうやってこの問題を解決したかがわかると思います。実は、杖を脇に抱えた待機ポーズから攻撃ポーズへの移行が一連の動作の間に組み込まれています。焦点は手の流れるような動きにあるため、杖を待機位置から攻撃位置へ動かす方が簡単だったのです。

ウーヤンの「守衛波浪」(しゅえいはろう)は、杖を地面に叩きつけて巨大な波を巻き起こす、特に印象的なアビリティの1つです。プレイテスト期間中は仮のアニメーションとして、同じく武器を振り上げ地面に叩きつける動作があるラインハルトのアース・シャターを使っていました。ですが、このアニメーションだとテスト時は特に問題がなかったものの、ウーヤンの動作としてはやや違和感がありました。

改善策を思いついたのは、私たちが「玄武之杖」(げんぶしじょう)のビジュアルを確認したときでした。ラインハルトの重いハンマーと違い、軽い杖であれば、地面にめり込むよりも跳ね返る方が自然です。この跳ね返りを取り入れることでより表現はリアルになったものの、ラインハルトの頭上から振りかぶるダイナミックな動作がまだウーヤンの俊敏なスタイルと合っていません。

私たちは杖を軸とした武術の動作を調べ、最大限の速さで杖を振るには肩の上から弧を描くように振るべきだと気づきました。また、三人称視点のアニメーションには回転の動きを加え、ウーヤンの機敏な戦闘スタイルとサポートヒーローとしてのマインドセットを反映するようにしました。ラインハルトはアビリティ後素早く反撃をかわそうとは考えないかもしれませんが、ウーヤンは考えるはずです。

次にオーバーウォッチをプレイするときは、お気に入りのヒーローのアニメーションを見て、ぜひこの記事で語られた内容に思いを馳せていたければ幸いです。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。このヒーローについてもっと知りたい!などあれば、ぜひ教えてください。


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